このページの最終更新:1st Nov 1998

ダイナミクスレンジの謎

小さな音 / 大きな音

小さな音

小さい音が得意なのか

いろいろな楽器奏者と話をしていると、よく「なぜクラリネットは小さい音が あんなにきれいに出るのか」ということが話題にのぼります。クラリネット吹きにとって、 静かな場面で求められるppはクラリネットでも非常に難しいのですが、他の木管楽器から比べると、 失敗が少ないということから、楽に出るものだと思われてしまうようです。
実際、他の木管楽器の人が苦労してppを出しているのと比較すれば、思い通りの音が 出ているのかもしれません。練習中や本番でも、音が大きくなってしまうことはあっても、 音がかすれたり、鳴らなかったりすることは少ないように思われます。その違いは、 いったいどこから来ているのでしょうか。

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楽器の構造は関係があるか

まず真っ先に思い当たるのが「クラリネットは片側閉管の特殊な構造をしている」 ということです。詳しくはこちらの記事を参照してほしいのですが、 閉管側では、空気は密度は変化しますが粒子の位置は変化しません。逆に他の楽器にみられる 開管の端では、密度は大気圧と同じですが粒子は大きく振動します。このことが、 クラリネットのppが安定しやすい原因とも考えられます。
疑似開管の管 そこで、このような実験をしてみます。テーパが付いた管の細い側の端がその状態に関わらず 開管端と近似できるのを利用して、クラリネットのマウスピースに、写真のような筒をつけてみます。 長さをクラリネットと同じにして、ppがを出しにくくなるかを検討してみます。
この管を吹いてみると、開管になっている関係で音が高く、また管に肉厚がないので へしゃげたような音になってしまいます。この点を差し引いて考えても、疑似開管の管では ppだけでなく全体に音が鳴りにくくなってしまいました。特にppのときは、息の圧力の微妙な変化で オクターブ上の音に移ってしまう事が多くありました。
このことが何を意味しているかといえば、開管端に発音源(この場合はリード)があるというのは 比較的不安定な状態であるということです。我々がppを吹く場合、息の早さや太さは あまり大きくありませんから、ちょっとした変化が非常に大きな影響を与えるのです。

ところが、これだけで全てが解決したかといえば、そうではありません。たとえば、 全く同じ一端閉管の構造であるEsクラ・Bbクラ・バスクラを比較すると、Esクラは ppが苦手とよく言われています。この原因は閉管構造の他の所にあるようです。

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楽器の大きさはは関係があるか

EsクラとBbクラの違いといえば、大きさしかありません。しかし、 それが本当に安定した音に影響を与えるのでしょうか。
狭管マウスピース EsクラとBbクラのマウスピースの比較では差がつきにくいので、左写真のような 発音体(マウスピース)を作りました。また、これにあわせたリードも作りました。
実際にこれを吹いてみると、管体に厚みがないからかどことなく頼りない音が出ます。 これは、上の疑似開管以上に音量のコントロールが利きませんでした。
このようになってしまう理由はあまりはっきりしませんが、一つ考えられるのは、 リードの可動部分が狭い事が原因となっていると考えられます。すなわち、 リードが小さいので、ほんの少しノイズが入ってもそれがリードの振動に与える影響が大きい、 よってppで吹こうとするとリードが小さい方が安定させにくい、ということになるのではないでしょうか。

以上のように考察すると、クラリネットは構造的にppが安定して出しやすくなっていると いうことができます。そのことを意識して作ったのか、それとも偶然そうなってしまったのかは 今となっては確かめるすべもありませんが、我々にとっては非常にありがたいことですね。

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