このページの最終更新:12th Feb 2003

腹式呼吸の原理

空気はどこへ行くのか

私達がクラリネットを演奏するときには、息を吸うことが必要です。 楽器を吹くときに限らず、人間は呼吸をしなければ死んでしまいます。
人間の呼吸には、大きく分けて二つの方法があります。それは、胸式呼吸と 腹式呼吸です。無意識に呼吸をしているとき、女性は胸式呼吸を、男性は 腹式呼吸をしていると言われますが、実際には両者の要素が混ざり合っていることが 多いようです。

さて、私達が管楽器を吹くときには、胸式呼吸ではなく腹式呼吸をしなさいと よくいいますが、なぜでしょうか。腹式呼吸をするときには、お腹を膨らませるように するといいますから、空気がお腹まで入るのでたくさん息が吸えるからでしょうか。
体の断面 まずは、吸った息がどこへ行くのかを考えることにしましょう。人間の体は、 鼻と口が、喉の少し上のあたりでつながっています。そして、そのすぐ下で 肺へつながる気管と、胃へつながる食道に分かれています。これを模式的に 描くと、左の絵のようになります。
この構造からすると、吸い込んだ息は肺か胃へと流れる事になります。そして 見た目には、どちらへ流れても問題なさそうにも見えます。しかし実際には、 吸い込んだ空気は肺へしか流れないのです。じつは、食道と気管の分岐点に 弁があって、ふだんは食道側が閉じています。そして、食べ物や飲み物(胃へ 送る必要があるもの)が通る時だけ、その弁が開くと同時に気管側をふさいで、 食べ物などが肺へ入り込まないようにしているのです。

この弁の機能は、ごくたまにうまく働かない時があります。たとえば、食事中に突然 むせ返ることがありますが、これは食べ物などが間違って肺の方へ入りかけたために、 急な空気の流れを作ることによって押し戻そうとしているのです。また、慌てて食事を したときにげっぷが出ることがありますが、これも、食べ物と一緒に飲み込んでしまった 空気が逆流しているのです。

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空気はどうやって肺に入るのか

腹式呼吸でも胸式呼吸でも、吸った空気は肺に入ることがわかりました。それでは、 腹式呼吸と胸式呼吸では何が違うのでしょうか。それは、肺に空気を吸い込む方法が 異なるのです。
腹式呼吸の原理 まず前提となることがひとつあります。肺は心臓などと違って、それ自身で動くことはできません。 肺に直接筋肉がついているわけではないのです。ではどうやって空気を吸い込んでいるのかというと、 肺の周りの部分(左の絵でオレンジ色の部分)の体積が一定であることを利用しています。 たとえば、左上の基本状態から、右上のように周りの箱が大きくなるとどうなるでしょうか。 オレンジ色の部分の体積(絵では面積)が変化しないのですから、水色の部分か白色の部分が 大きくなる必要があります。白色の部分は、人間では内臓にあたる場所ですから、そう簡単に 膨らむことはできません。ですから、残された水色の部分、すなわち肺が膨らむのです。 胸式呼吸は、これと同じ原理で空気を吸い込みます。肋骨が動くのは、この絵で箱を 大きくしているのと対応しています。

箱の大きさを変えなくても、肺を膨らませる方法があります。左上の基本状態から、赤色の線を 下に移動します。するとやはり、オレンジの部分を同じ体積にするために、水色の肺の部分が 膨らむことになります。人間の体では、この赤い線にあたる部分が横隔膜です。 また、この絵では白色の部分が単純に狭くなっていますが、実際の体では、さほど 縮むことができないので、その分お腹構えや横へ出っ張るような感触があります。 ですから「腹式呼吸のためにお腹を膨らませる」と表現するのは間違ってはいないのですが、 だからといって空気がお腹に入っている訳ではありません。

このような、呼吸方法の原理を知っていても、クラリネットを演奏するのに直接役に立つことは まずないでしょう。でも、一番基本となる原理の概略を知っていて損はないと思うので、 この機会に再認識してみるのも良いのではないでしょうか。

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