このページの最終更新:6th Mar 1999

息と音程の相関性

発音原理による影響 / アンブシュアによる影響

発音原理による影響

息の流れと音程の関係

クラリネット奏者なら誰しも経験したことがあるとは思いますが、なにも意識しないで 音を大きくしようとすると、ピッチが下がってしまいます。逆に、音が小さくなると うわずって聞こえます。一方で、フルートの場合これと全く逆の現象が起こります。 すなわち、音が大きいとピッチがあがり、逆に小さいとぶら下がってしまうのです。
これらは、そういう傾向にあるということを知っていれば、自然に回避することが できるようになります。それはおそらく、無意識のうちにピッチの変化を相殺するように 何らかの変化を与えているのでしょう。

私たちが楽器を使って大きな音を出すというとき、息の量は自然と多くなり、 息のスピードも速くなる傾向にあるのは、どんな楽器でも一緒です。にも関わらず、 楽器によってピッチがどのように変化するかは全く変わってしまいます。その原因は、 クラリネットとフルートの発音原理の違いによるものなのです。そこで、これから それぞれの楽器の発音の原理と、息の状態が変わるとどのようになるのかを見てみましょう。

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クラリネットの振動とピッチ

リードの様子 まず、クラリネットの振動から見てみます。リードがどうして振動するのかは 別の記事で詳しく述べていますが、簡単にいうと、 リードの上面を流れる息の影響による力と、リードの元に戻る力が交互に強くなる ことで、リードが行ったり来たりするのです。
さて、息による力は、息の早さにほぼ比例します。大きな音を出そうとすると、息の量やスピードが 速くなるのは上でふれたとおりです。ですから、大きな音を出そうとするとより大きな力が リードにかかり、反発力と釣り合う場所が遠くなります。その結果、リードはより大きく動くことになります。
リードが大きく動くことは、楽器内部の空気をより大きく動かすことにつながって、 結果的に音量が大きくなります。ところが、リードが大きく動くということは、 リードが1往復するのに必要な移動距離が大きくなることにもなります。移動距離が大きくなると同時に リードも早く動くようにはなりますが、その早くなる割合が小さすぎるので、結果として リードが1往復するのに必要な時間が長くなってしまいます。リードが1往復する時間が長い ということはすなわちリードの振動が遅い、ということであり、それはピッチが下がっていると いうことに他なりません。息が遅くなれば、これと逆の現象が起こります。
もちろん、上に述べた変化は目に見えて違うほど大きくはないので、我々の耳には ぶら下がったりうわずったり聞こえ、メーターで見ると数セントから10数セントくらいの 差になって現れるのです。

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フルートの振動とピッチ

フルートのカルマン渦 次に、フルートの振動原理を見てみます。
フルートにはリードがありません。フルートの音が鳴るのは、口の部分に吹き付けた息による流れが 渦になることによります。この渦をカルマン渦といいます。口の部分にできた渦による振動が、 楽器内部の空気と共鳴することで音になるのです。
ところで、このカルマン渦は闇雲にできるわけではありません。あるルールに従ってできます。 そのルールは「渦の間隔は速度が異なる2つの面の間隔に比例する」というものです。 ここで重要なのは、息の早さには関係がないということです。ですから図の渦は、 どんな息の早さでも同じ渦になるのです。
カルマン渦は、息の早さに比例した速度で遠くに流されていきます。流された距離が 上で述べた一定の間隔になると新しい渦ができます。ということは、息のスピードが上がれば、 渦はどんどん流されて、新しい渦がどんどんできることになります。渦の数と振動数は比例するので、 渦がたくさんできるとピッチはあがります。だから、フルートは息を強くするとピッチがあがる 傾向にあるのです。もちろん、息が弱くなれば逆の現象が起こるのはクラリネットと同じです。

このことをうまく利用した技法があります。それは、フルートのピッチベントです。フルートの場合、 楽器の上面が観客席を向くように回すことで、簡単にピッチが大きく下がります。
楽器を回すと、口と楽器の息が当たる部分が遠くなります。すると、楽器に当たる息のスピードが 見かけ上遅くなります。さらに、速度の異なる面が離れるので、渦の間隔も広がります。 その結果、ピッチが大きく下がってしまうのです。もちろん、クラリネットはこの方法が使えません。

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