このページの最終更新:10th Mar 1999

楽器のつぶやき

あたしは常に妹と僕は飾りじゃない私を抱きしめないで / 出番のない私

出番のない私

私たち、クラリネットのキイには正式な名前があるのかどうか、私たち自身も よくわかりません。ほとんどの方は、レジスタキイのほかは「これ」なんて指示語で 済ましているのかもしれませんね。
そういうわけで、私は文字通り名乗るほどの名前を持たないんですが、わたしは、 キイの中ではずば抜けて長い体をしています。下管のキイも確かに長いんですけど、 あの人たちは何人かが一組で一つの仕事をしてますからね。私は一人立ちしてますから。 そう、私は上管の4人姉妹の長女です。こう長々と説明しないといけないなんて、 ちょっと困ったものですね。

実は私、いつもすごく寂しい思いをしているんです。私たち4人兄弟に関わってくださるのは 右手の人差し指なんですけど、あの人はいつもずっと遠くの下管のところにいるんです。 まあ、あの人の一番の仕事はトーンホールをふさぐことですから、それは仕方ないんですけど、 たまに私たちのところに来ても、ほとんどは一番下の妹のところにしか来てくれないんです。 そりゃ確かに、あの人から見れば一番近いところにいる訳なんですけど、ちょっとえこひいきが 過ぎるような気がするんです。たまに上の方まで来ても、2番目の妹のところにくるだけで、 私のところや、3番目の妹のところには、滅多に来てくださらないんです。
わたし、あまりにも寂しかったので、調べてみたんです。私の出番ってどのくらいあるのかって。 そうしたら、たった一つしか見つからなかったんです。それも、普段の音楽では ほとんどお目にかかれない音の、何番目かの変え指として。私、あまりにショックで 固まってしまいました。

どうして私は生まれてきたんでしょうね。滅多にでてこない音の、滅多に使わない 替え指のためだけに、ここにいるのでしょうか。そしてほとんどの場合、一度も 人差し指に触ってもらうことなく、引退するのでしょうか。
お願いです、ほんのちょっとでもいいから、私に出番をください。・・・でも、きっと 叶わない望みなんでしょうね。

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