このページの最終更新:13th Jun 2002

もう少しBとHの謎

ある書籍の説

BとHの謎の推理で述べた、Bが音階から外れた音にある ことについて、訪問者の方からこんな分権の記事を紹介していただきました。

「読者の中には、今日のドイツの音名法によると、私たちのいうロが「h」、そして 変ロが「b」とよばれることを不思議に思った人が少なくないと思うのですが、実をいえば これは、十六世紀のドイツの印刷業者が・・・(中略)・・・特別の活字を作らないで、 形がそれらに最もよく似た既存の活字であるhとbを流用したことから 生まれた・・・(中略)・・・音名法なのです。」
音楽之友社「読譜法の今昔 シャープとフラットのはなし」(東川清一 著)
19ページより引用したメールの記事を引用

もう少し補足すると、特別の活字というのは、当時使われていた、ある音をファと読ませる 「丸いb」と、ミと読ませる「四角のb」という記号のことだそうです。「四角のb」は、 文字通りbの下の丸い部分が四角くなったような記号で、この「四角のb」は形としては 今日のナチュラル、意味でいうと今日のシャープの祖先である、とこの文献では 説明されている、ということです。

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いろいろ考えてみると

さて、手元の「音楽通論」にも実は同じような話が載っています。しかし、通論では 丸いbがフラット、四角いbがナチュラルになったことは述べられていますが、音名との 関係は述べられていません。また、丸いbが変ロ、四角いbがロ音であると述べており、 「シャープと〜」の説明とは若干異なります。
両者に共通しているのは、「文字の形がいろいろな形で残っている」という点です。 これはシャープなどに限ったことではなく、たとえばト音記号はGの文字が、ヘ音記号は Fの文字が変化したものといわれています。ですから、丸いbや四角いbが記号に 変化したとしても、特に疑問はありません。

次に、丸いbとアルファベットのbを比べてみると、ほとんど同じであるといってもいいでしょう。 また、四角いbとhを比べてみると、若干雰囲気は異なりますが、「丸いbと書き分けるなら 次に近い文字はhだ」といわれれば、納得できるような気がします。ということから、もし 活字にしなかったとしても、bとhに近づいていった可能性は充分にあるといって よいと思われます。
つまり、あるときに丸いbと四角いbを使って書いた楽譜を、後の人が見てbとhだと 解釈したと考えれば、これらの記号とB、Hの読みのずれが関連付けて説明できます。

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まだ疑問もあるけれど

ただ、この解釈にも、若干気になる点があります。
たとえば、BやHが定着する前の人は、丸いbや四角いbを、なんと呼んでいたのか ということがあります。きっと、それぞれの音に固有の名前がついていたか、 ヨハネ賛歌からとった「ドレミファ」を使っていたのでしょう。しかし、その方法が 本当に習慣になっていれば、わざわざドイツ音名に直す必要もないわけですから、 不思議といえば不思議な感じがします。
また、BとHがずれているのはドイツ音名だけで、英語読みのときはそのままですし、 日本語の「ハニホヘト」もずれていません。日本語読みについては、文明開化のころに 導入したときに、英語読みをベースにしたか、ドイツ音名でずれているのが ややこしいとして直してしまったか、そんなところではないかと推測できます。

いずれにしても、まだまだすべて納得できる理由は見当たりません。もっと当時の資料を 調べれば、何かわかるのかもしれませんが、とりあえず我々は、たまにこんなことを 通して、音楽を違った切り口から眺めることを楽しんでいればいいのかも知れませんね。

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