このページの最終更新:6th Sep 2001

音楽の動と静

芸術を比べてみよう

世の中には、さまざまな芸術があります。それらを比べて優劣をつけることは、もちろんできません。 それぞれがそれぞれの良さを持っているからなのは、言うまでもありません。
しかし、優劣をつけることはなくても、一見お互いに関連性のないそれぞれの芸術を比べることで、 それぞれのよさを再発見することは充分可能ですし、非常に有用なことともいえます。ここでは、 いくつかの例を引きながら、最終的に音楽の持っている特長を探っていくことにします。

とはいっても、何をどう比べるのかによってそれぞれの見え方は大きく変わってきます。今回は、 少し変わった視点を考えてみました。芸術をその「動き」で眺めてみようというのです。 動きを具体化するために、それぞれの芸術での、時間の役割を考えることにしてみましょう。<

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時間軸で見る芸術

それでは、具体的に考えていきましょう。
まずは、時間の要素が少ないものを考えてみます。たとえば絵画を見てみると、絵そのものは ちゃんと管理さえしていればいつまでも存在します。すなわち、いったん完成されたものは ずっと芸術として存在しつづけることができるのです。この仲間には、陶芸や書道なども 含まれるでしょう。
これをさらに細かく見てみると、その完成に至る過程の時間軸に違いがあることに気づきます。 たとえば、書道では筆順があり、それぞれの文字も普通は上から下へ、右から左へと順にかかれます。 その順序を崩すことは叢書のように崩すことで起こる変化以外はあまりありません。また 鑑賞する側も、その時間の流れをはっきり認めることができます。これに対して絵画では、 部分部分での筆のタッチのような時間の流れはありますが、画面の右端と左端のどちらを先に 描いたか、などということはあまり考えません。この意味で、絵画は書道より時間軸が細かく、 動よりも静のイメージに近いと言い換えることができると思います。陶芸はさらに時間軸が わかりにくくなっているようです。

この対極にいるのが、時間の流れに忠実な芸術です。演劇では、演じられている瞬間がすべてであり、 文明の利器を使わない限りその場限りで消滅してしまいます。もちろん音楽も、この仲間に入ります。
さらに見ると、演劇は大きな時間の流れの中にも細かい時間の流れが存在します。たとえば役者の動き、 表情などに見られるように、小さな時間の流れを組み合わせることで、大きな時間の流れを さらに豊かにしているともいえます。もちろん音楽でもそういう要素はありますが、画面がなくても 音楽が芸術として成り立つことを考えると、演劇ほど重要な要素にはなっていないようです。

さらに、音楽を細かく分けて考えてみると、音楽は意外と動と静の幅が広いことに気づきます。 宗教音楽の多くや、クラシック系の音楽は、ステージ上で派手なパフォーマンスをするということは めったにありません。粛々と流れる時間に乗る、音の要素の複雑な掛け合いが、音楽全体の中で 大きなウエイトを占めます。
これがポップスやジャズになると、奏者のパフォーマンスもさまになってきます。とはいっても、 やはりメインは音の変化で、それをさらに引き立たせる役目をパフォーマンスのような動きが 担っているといえます。これがステージマーチングショーでは、奏者が動くことで作り出す模様や 動きそのもののウエイトが大きくなり、音楽と動きのどちらが主でどちらが従か、というのは ほとんど分からなくなります。これがミュージカル、オペラになると、ほとんど演劇と同じように 時間軸の流れが重要になってきます。

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この事実をどう生かすか

それでは、いま分かったことをどのように生かしていけばいいのでしょうか。
ひとつは、いま自分たちがしようとしている「音楽」という芸術が、どのようなものなのかを よく感じ取ることだと思います。そしてその一番のキーポイントは、その場にいないと 音楽を享受できないという事だと思います。すなわち、その演奏会に行かなければ、そのバンドの、 その日の、その曲目は聴くことができないし、そうだからこそみんな時間(とお金)をかけて 演奏会へと足を運ぶのです。ですから、一人でも多くの人が「この演奏会に来てよかった」と 思えることが、芸術として成功したかどうかのひとつのバロメータになるのです。

それともうひとつ、複数のステージでいくつかのジャンルを組み合わせる場合、それぞれの 特徴をはっきりつかみ、上手に吹き分けることが、演奏会全体のメリハリにつながってくる のではないでしょうか。クラシックとドリルは、同じ音楽であっても、その様子は先に述べたように ずいぶん異なります。これをまったく同じ感覚で吹いていては、どちらか(あるいは両方)が ちぐはぐになってしまうでしょう。

音楽は、おおきな時間軸が一本通っている芸術です。その周りをどのように固めるかによって、 幅広い表現が生まれてきます。これをうまく演じ分けることができるなら、もっと素敵な 演奏ができるのではないでしょうか。

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