このページの最終更新:13th Nov 1998

作・編曲者の心理を読む

楽譜に隠されたメッセージ

我々が演奏をするときに、一番基本になるのは楽譜です。
何を今さらという気もするでしょうが、このことをもう一度見つめ直すと、案外 重要なことであることに気づきます。それは、楽譜に直接かかれた音符や記号の 他に、実に多くの情報が、一つの曲に中に詰められているということです。

たとえば、ある交響曲にクラリネットのソロがあったとします。そのフレーズには なにかしらの意味があるでしょう。たとえばテーマの再現だったり、物語の一部分を 描写していたり。でも、そこのはそれ以上の意味、あるいは作曲家の主張が 隠されているのです。
これは、別にソロに限ったことではありません。全体が大音量でなっているときでも 同じことがいえます。そういう隠された部分を読みとって、音楽に反映できたなら 演奏はより一層奥行きのあるものになりますが、さて、その隠された メッセージをどうやって読みとればいいのでしょうか。

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作曲家や編曲家の考えること

ここで、その曲ができたときのことを考えてみてください。時代や作った人 によってその方法は様々でしょう。ピアノで音をとりながらかいたかも しれないし、全く何もないところでかいたかもしれません。現代なら、コンピュータ ミュージックを使うこともできます。とにかく、そういう時のことを考えてみます。
作曲家の頭の中に、あるフレーズが浮かんだとします。しかもそれが非常にいいもので、 しかも今作っている音楽にうまく使えるものであれば、それは採用されるでしょう。
さて、この時点で、そのフレーズを誰が吹くかは決まっていません。ソロなのか 全体で吹くのかも決まっていないのです。それを決める要因は何でしょう。

もちろん一つではないのですが、この決定に際して作曲家がそのフレーズに対して 持っていたイメージとか、意味づけが大きく反映されるはずです。静かな景色を 思い浮かべていたら、全体で目一杯ならすことは絶対なくて、オーボエのソロに したりするでしょうし、逆に、オーボエのソロで勇ましいシーンを演出することなど 普通は考えつきません。
むろん、何も考えないで楽譜をかいた可能性も皆無ではないのですが、おそらく ほとんどの場合は意識して、あるいは無意識のうちにそういうことを考えている はずです。特に編曲の場合、原曲で使っている楽器を置き換えるかどうか という判断基準の一つにこういう点があるから、いい編曲ならそういうことが より強調されているはずです。

他にもあります。普通、曲の中には同じようなフレーズが何回も出てくるものですが、 たとえばスラーの切り方が違っていたりすることがあります。何気なしに 吹いてしまえばそれまでですが、ちょっとこだわってみると奥が深いのです。
別に、同じようにスラーをかいても構わないのに、あえて変えたのはなぜでしょう。 はじめより流れてほしいからかもしれないし、逆にビート感を大事にしてほしい からかもしれません。
こうやって楽譜をみてみると、そこには限りなくたくさんのメッセージが 込められていることに気づくでしょう。

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演奏に反映させてみよう

さて、こういうメッセージを演奏に生かすにはどうしたらいいのでしょうか。
まずは、できるだけたくさんの情報を引き出すことです。細かい表記の違いに 注意を払うのもそうだし、他のパートと比べたり、他の部分と比べたり、ときには 同じ作者の違う曲や、同時代の違う人の曲と比較するのも、新しい発見があって よいでしょう。また、その曲の作られた背景や、作られた時代の背景、そのころの 作者の境遇なども調べてみると、また違う解釈ができたりします。
そうやって引き出した情報は、充分に吟味する必要があります。同じフレーズから 相反することを連想させることも多々あります。また、いくつかの情報を照らし 合わせてみると、矛盾をきたすこともあります。そういったものをどのように 取捨選択していくかが、奏者の力量にかかっているともいえます。
その吟味選択がすめば、後は自分が吹くときにそれにあうような吹き方を 研究すればいいのです。実際吹いてみて解釈が変わることもあるので、 そのときはもう一度考えることをためらってはいけません。

こうやって手順を踏んで研究したことは、直接演奏に現れるとは限りません。 でも、そういうことをするかしないかで、演奏の奥行きも変わってくるだろうし、 奏者の力量が大きく向上するのにも寄与するのではないでしょうか。

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