このページの最終更新:1st Feb 1999

奏者役者論

演奏会での奏者

演奏会を見に行くと、実にいろいろなタイプの演奏家がいることが分かります。 よく「入場するときの歩き方で誰なのかが分かる」といいますが、そこまでいかなくても、 誰が緊張していて、誰が自信いっぱいなのかぐらいは、観客席へも何となく雰囲気が 伝わってきます。

ところで、音楽は基本的には音が主役です。現に、レコード、カセットテープ、CD、MDは どれをとっても音しか記録されません。ところが演奏会のアンケートを見ると、よく 「吹いている人が楽しそうだった」とか「みんな無表情で怖かった」という感じの感想を 目にします。このことからも、演奏会の場合、奏者の存在がコンサートに何らかの影響を 与えていると見ることができます。
ですから、演奏会の本番で奏者がどのように振る舞うかということも、コンサートを よりよいものにするためには注意しておく必要があるでしょう。たとえば、 指揮者が退場した後に舞台が暗転しないからといって、ステージ上でおろおろされては、 せっかくの雰囲気が台無しになってしまいます。普通に、堂々としていれば それほど違和感もなく処置できるでしょう。

このページのはじめへ戻る

背景や表情も無縁ではない

音楽は、確かの音そのものが一番大事な要素ではありますが、特に演奏会の場合 それが全てではありません。一番顕著な例が、ポップスステージや、ステージマーチングショウの 背景(ホリゾント)です。
ホリゾントとは舞台照明の一種で、白い幕に数色のライトを当てることで、背景全体を 様々な色にするものです。また、影絵と同じ要領で背景に簡単な絵(雲や雪の結晶など)を 描くこともできます。これらは、普通は曲目にあわせて選択されます。
ここで背景色をうまく使うことで、ステージの統一感を出したり、場面転換を強烈に アピールしたりする事ができます。逆にその選択を誤ると、ちぐはぐな感じがしたり、 盛り上がった雰囲気に水を差してしまうこともあります。

シンフォニックステージの場合、ホリゾントを使うことは希なので、光による演出は ないように思われます。しかし、明るい楽しい曲を気難しそうに演奏したりすると、 見ている方にしてみれば「おやっ」と感じさせる要因になってしまいます。 やはり、その曲にあった表情があるもので、少なくとも曲にあわない表情をすると 違和感が出てしまいます。それは、レクイエム(鎮魂歌)を、全員がひょっとこの面をつけて 演奏しているところを想像していただければ、理解できるのではないでしょうか。

このページのはじめへ戻る

実際の演奏会では

上のようなことを知っているかどうかは、演奏会を根本からひっくり返すような 深刻さを持ったことではありません。でも、それを知っていて、うまく活用することで よりよい雰囲気にすることは十分可能です。
よく、本番中失敗して、それを表情や態度に出す人がいますが、それは観衆に 「私は失敗しましたよ」と自らPRしているようなものです。失敗を見るために 演奏会に足を運んでいる人なんていないのですから、わざわざPRする必要はありません。

我々演奏家も、舞台に立つ以上はそれなりの覚悟が必要です。舞台に立つ役者は、演技だけでなく、 表情や些細な動作までも、自分のコントロールのもとにおいて、演技を引き立てるのに 利用するといいます。私たちも、演奏以外の点も、演奏を引き立てるためにうまく利用すべきです。 この限りにおいては、演奏家も一種の役者だといっても過言ではないといえます。

このページのはじめへ戻る