このページの最終更新:12th Jan 1999<

国産か舶来か


楽器の価格の違い

楽器店に行くと、様々な価格の楽器が販売されています。また、メーカーもたいていは複数のものがあります。 クラリネットの場合、そのうち大きな割合を占めるのは YAMAHA、CRAMPON、SELMER でしょう。 実際にはもっとたくさんのメーカーがあるのでしょうが、少なくとも学生バンドや、 趣味で演奏する人の楽器を眺める範囲では、この3大メーカーでそのほとんど全てが占められています。 その理由は後で考えることにして、まずは、これらのメーカーの製品にどの位価格差があるかを 見てみましょう。

下に掲げる表は、上であげた3メーカーのパンフレットから、材質や設計目的(どんなレベルの人が 吹くことを考えているか)を参考にして、似たようなものが横に並ぶようにしたものです。 なお、ここにあげた以外の種類の楽器もいくつかあるのですが、ここでは省略しました。

YAMAHA(日本)CRAMPON(仏)SELMER(仏・米)
型番定価(税別)型番定価(税別)型番定価(税別)
YCL-250\70,000-B12\80,000-1401\65,000-
YCL-450\140,000-E11\140,000-CL-210\167,000-
YCL-853II\260,000-E13\240,000-プロII☆\240,000-
YCL-953\340,000-R13\340,000-10SII☆\340,000-
------RC\380,000-レシタルI\360,000-
YCL-952\490,000-Prestage\480,000-レシタルI13F\400,000-
YCL-951\510,000-Festival\500,000-------

これを見てわかるのは、メーカーの国籍に関わらず、楽器の価格差には大きな違いがないと言うことです。 同じフランスが活動の中心である舶来2メーカーが、同じような価格なのは何となくわかる気もしますが、 YAMAHA までが同じようになってしまうのはなぜでしょうか。

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価格差が少ないわけ

価格差が少ない理由を考えるために、まずは楽器の価格がどうやって決まるのかを 考えてみましょう。
楽器の価格を決めるのには、その楽器をつくって売るまでにかかるコストが大きく関係してきます。 楽器メーカーも、善意で楽器をつくっているわけではないので、材料代よりも安い価格で 楽器を販売することは絶対ありません。楽器の値段は、材料費、加工費(工員の賃金も含む)、 販売にかかる費用、そして企業の利潤の合計です。

まず、材料費から見ていきましょう。
クラリネットの主な材料は、本体のグラナディア、キイの真鍮がほとんどです。 このうちグラナディアは、どのメーカーもアフリカ地方原産のものを使うのですが、 これは、現地で伐採するだけでなく、一次乾燥を済ませ、大まかな形まで加工した状態で 輸出されます。ですから、伐採したものを直接買い付けるときほど価格に差ができません。
もう一方の真鍮は、グラナディアよりももっとありふれた材料で、グラナディアより安価です。 ですから、価格差があったとしても、楽器全体のなかではそれほど大きな影響は与えないといえます。

次に加工に関する費用ですが、これも、同じ人間や機械が同じようなことをやっている以上は、 加工の手間やそれに関する費用はそれほど差がつきません。工員の賃金についても、 日本は確かに賃金が高いですが、アメリカやフランスも結構高いので、大きな差にはなりません。
販売にかかる費用ですが、確かにメーカーから消費地までの距離には大きな差はありますが、 原木を輸入するのに日本は米仏の何倍もの距離を(しかも原木は楽器より大きく重い!)移動するので、 結局そんなに大きく差はつきません。メーカーの利潤も、あまり大きくては楽器の値段が上がって 売れなくなるし、逆に小さすぎては利潤が残らないのですから、ある程度の範囲に収まるであろう事は 容易に想像がつきます。
以上のように考えれば、国産楽器でも輸入楽器でも、価格に差が少ないのは当然ということになってきます。

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では何が違うのか

でも、国産のものと舶来のものを比較してみると、価格に現れないいくつかの違いが見えてきます。 それをいくつかあげてみましょう。
まずは、どのメーカーも基本的には自分の国の人が使うと言うことを第一に考えていると言うことです。 これは車などでは顕著なのですが、はじめから輸出を考えて作っている車を別にすれば、 自分の国の交通ルールにあわせて運転席がつけられています。クラリネットについても、 大柄で手や指の長さが比較的大きい西洋人が使うことを前提とした設計をした楽器が、 特に大きな楽器(バスクラリネットなど)でみられます。ですから、極端な場合、 キイまで指が届かないということもあり得ます。
また、本拠地が遠く離れているということは、楽器を購入した後のアフターサービスにおいて ハンディを背負っているともいえます。これもやっぱり車と同じなのですが、 純正部品を手に入れたり、メーカーの正規保証を受けるとなると、舶来メーカの場合 よけいな手間がかかったり、余分な支出を強いられることにもなりかねません。

ところが、ここであげたことが必ずしも当てはまるとは限らないのが、今の日本での状態だといえます。 というのは、現在の日本ではクラリネットの需要が非常に大きくなっているので、 日本人向けの独自設計の楽器をつくったり、日本に本格的なサービス拠点をおいても、 十分採算がとれるのです。実際、CRAMPON では、日本向けと欧州向けのだいぶ違った設計の楽器を 平行して作成しているのです(この両者は、楽器についたエンブレムが全然違います)。
これらのことを考慮すれば、メーカーの国籍による違いを過度に考える必要はないといえます。 ただし、楽器の音色や吹奏感に対する考え方(ポリシー)は、メーカーのある国の考え方に 大きく影響されているので、その点は考慮する必要があります。

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他のメーカーではだめなのか

楽器をつくっているメーカーは、上の表にあげたメーカーの他にもいくつかあります。 しかし、上でも少し述べましたが、他のメーカーの楽器はそれほど見かけないように思われます。
たとえば家庭工業的なメーカーを仮定してみると、その主人の技量が確かなものであれば いい楽器ができるでしょうが、そうとは限りません。また、いくら頑張っても大量生産はできませんし、 ひとつひとつの個体差も大きいでしょう。さらに、メーカーが海外にあれば販路も限られるし アフターサービスも不利になることは明らかです。こうやって考えると、大きいメーカーの楽器を買う方が 無難な選択のように思えてきますし、事実無難でしょう。
しかし、それらもあまり深く気にする必要はないかも知れません。楽器を買うときには 複数のメーカーの複数の型の楽器を、複数吹き比べて一番いい物を選ぶのであれば、 上に述べたことはあまり関係なく、単に選択肢の一つとして考えればいいのです。 また、アフターサービスにしても、メーカーよりも楽器屋による部分が大きいので、 あまり考えすぎるのもどうかと思います。

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