このページの最終更新:25th Dec 2002

みんなの物だからこそ


備品楽器は共有財産、でも…

クラリネットに限らず、管楽器は比較的高価なものです。最近では入門向けとして 非常に安価な楽器も出回っていますが、それでも中高生が自分のお小遣いで 買うには、多少の勇気が必要な価格ではないかと思います。ですから、はじめて 管楽器を手にする時、それが自分のものではないということはよくあります。 学校であれば学校の楽器、市民バンドなどであればそのバンドが保有している楽器を 使うことも多いのではないでしょうか。

ところが、その備品楽器をよく見ると、あまり状態のよくない、あるいは管理が 行き届いていない楽器がよく見受けられます。もちろん、備品楽器の中には ずっと昔からあるものもありますから、古くなって痛んでしまった、ということも あります。しかし、同じように古い楽器でも、ビンテージ物といわれる楽器は、 かなり古い楽器であっても、新品同様の非常によい状態の楽器が多く存在します。 一方で、最近に購入された備品楽器でも、どこかが壊れていたり、調子のよくない 楽器も少なくありません。なんらかの備品楽器特有の事情で、楽器の状態が悪くなって しまっているように見受けられます。
楽器の状態が悪くなるのは、結局のところ管理がいい加減であったり、扱いが 粗雑であったりすることが原因です。では、なぜ備品楽器がきちんと管理されない 状態になってしまうのでしょうか。

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みんなの物=自分の物ではない?

楽器に限らず、私達の身の回りにある物には、たいてい持ち主がいます。 それは誰か一人を特定できることもあれば、複数の人の共有物であったり、人ではない すこし抽象的なもの(会社や国など)であったりします。
一人が所有している物の場合、その物の管理は所有者がすべて行ないます。車の車検ように 個人では手に負えない場合は、誰か(ディーラーや整備工場など)に作業を依頼することに なりますが、それでもいつ誰に何を依頼するかの決定権と決める義務は所有者にあります。
いっぽう共有物の場合は、話が複雑です。会社などの場合、その物を使っている人のほかに 管理責任者を置いて、その人がまとめて面倒をみることもあります。しかし時には、 使っている人は複数いるのだけど誰も管理していない、ということがあります。

よくあるパターンのひとつは「自分がやらなくても誰かがやってくれる」という気持ちが働いて 自分では何もしない、というものです。手入れをしたり整備をしたりするのは、ほとんどの場合 手間やお金がかかりますから、複数の人が同じ事をしたら重なった分が無駄になる、という 感覚がベースにあるのではないかと思います。連絡を取って分担すればいいのですが、そうせずに 各個人の判断ですべてを他人に任せてしまうと、このような状態になってしまうことがあります。 もう一つ多いのが「自分のものではないから手間やお金をかけたくない」というものです。たとえば 今は自分が専有していても、いずれは返してしまうような場合、自分の手元に残らない 物に対して時間やお金をかけることが、もったいないことのように感じてしまうのです。
管楽器の場合、短期間でひとつの楽器を複数の人が使いまわすということはあまりなく、ある人が 備品楽器を長い期間専有する、という使い方が大半だと思います。であるとすれば、 個人持ちの楽器は自分のものだから手間やお金をかけてでもきちんと手入れをするけれども、 備品楽器は自分の手元に残らないからできるだけ手間暇をかけない、という行動パターンが 見えてきます。実際「学校の楽器なのでお金をかけて調整をしたくない」とか、「なぜ 楽器を返却する時にオーバーホールしなくてはいけないのか」という声を聞くことがあります。

しかし、これらの声は借り手の身勝手な言葉にすぎません。たとえ学校の楽器であっても、 よい状態でなければよい演奏は期待できませんから、よい状態を保たなければなりません。 でも、学校の楽器だからといって、誰かが肩代わりしてくれるわけではないのです。 普通は、占有している間はその人のものと同じ扱いを受けます。多くの場合、他の人が 手出しできないからです。ですから、借りている人が責任を持って管理しなくてはなりません。
また当然のことですが、楽器は使用することで各所に傷みが出てきます。備品楽器を 専有している以上、その人が借りている間の痛みはすべて、借りた人の責任です。それを 返却する時に元の状態にして返すのはいわば当たり前のことです。誰だって、貸した物が ボロボロになって返ってきて嬉しいことはありません。それがなぜ、備品楽器なら許されると 考えるのでしょうか。もちろん、オーバーホールではない調整で元通りになることもありますから、 オーバーホールを必須とする必要はないですが、だからといって使い終わったままの状態で、 とにかく返せばいい、というものではないはずです。

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だからこそ大事にしたい

備品を借りるということは、本来なら自分で用意しなければならない物を、替わりに 用意してもらってそれを借りる、ということです。自分で用意するという大きな負担を 肩代わりしてもらっているだけですから、取り扱い方に差が出るのはおかしいですし、 他人様のものを使わせて頂いているのですから、むしろよりいっそう丁寧に扱って しかるべきということすらできます。
しかし現実には、自分のものは大事にするけどみんなのものはいい加減、ということが 多々あります。代々いろんな人がそうやって来た結果なのかもしれません。だからといって これからも同じように続ける必要は微塵もないはずです。

世の中には「発(た)つ鳥あとを濁さす」という言葉があります。また、公共施設などで 「来たときよりもきれいにして帰りましょう」という表示がされていることもあります。 いずれも、公の場所や物を大事にすることを促しています。裏を返せば、このような 格言や表示で注意を喚起しなければ、私達は共有物を大事にするという単純なことを 忘れてしまう、ということでもあります。
楽器に限らず、備品類や楽譜、練習場所など、みんなで使っているものの扱い方を 一度じっくり考えてみてはどうでしょうか。

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