このページの最終更新:28th Dec 1998

クラリネットの価格と性能


楽器の値段について

楽器屋へ行くと、新品のクラリネットが並んでいるショウケースがあったりします。 同じ調のクラリネットであれば、大きさはもちろんのこと、見たときの感じはほとんど変わりません。 強いていえば、ABS樹脂とグラナディア材のみための違いがある程度です。 ところが値札を見ると、時には10倍近く差がある楽器があったりします。 一体どこが違うというのでしょう。
まずは、実際に扱われている楽器の定価を下にあげてみます。表は、YAMAHA のクラリネットの定価と、 主な仕様です。データは、1998年10月頃のパンフレットから引用しました。

型番本体素材キイメッキ定価(税別)
YCL-250ABS樹脂ニッケルメッキ\70,000-
YCL-450グラナディア銀メッキ\140,000-
YCL-650F高級グラナディア銀メッキ\180,000-
YCL-853II最高級グラナディア銀メッキ\260,000-
YCL-953最高級グラナディア・厳選材銀メッキ\340,000-
YCL-952最高級グラナディア・厳選材銀メッキ\490,000-
YCL-951最高級グラナディア・厳選材銀メッキ\510,000-

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材質の違いについて

まず真っ先に違うとわかるのは、楽器本体の材質です。YAMAHA の場合、上の表のように 表現されています。他のメーカでも「上級グラナディア」「最上級グラナディア」と表現されています。
ところで、ABS樹脂とグラナディアの違いは見た目にもわかるのですが、たとえば 「グラナディア」と「最高級グラナディア」ではなにが違ってくるのでしょうか。 特に、見た目にはたいして違いがないだけに、かなりの疑問になってきます。

様々な情報を総合すると、この違いは「材料のばらつきの小ささ(確実性)」と関係があるようです。 グラナディアは木材ですから、その育った状態によって個体差があります。たとえ同じような平原に 植わっていたとしても、隣の木との位置関係などで条件が変わってしまいます。 すると、材料によって密度が微妙に違っていたり、年輪の入っている間隔が違っていたりしてきます。 それがどこまで性能や音質に影響を与えるかは、ちゃんとした調査がないので何ともいえませんが、 案外大きな影響を与えてしまうようです。その差が少なく、一定の基準を満たしているということが 「高級」であるということになってきます。

いっぽうで、伐採された材木が楽器になるまでの過程も重要になってきます。 グラナディアに限らず材木はすべてそうですが、伐採された木がすぐに実用に供されることはありません。 必ず乾燥という過程を経ています。グラナディアの場合は、基本的には材木を 積み上げておくのですが、定期的に積み方を替えたり、置いてある部屋の環境を一定に保ったり という配慮が必要です。もちろん「高級じゃないからいい加減」というわけはないのですが、 より確実に、きめ細かく管理された材料が「高級」「最高級」と名乗っている一面はあるようです。
もちろん、それだけ手間をかければ人件費や付随する費用が増大するのですから、 価格は上がってきます。ただ、それだけで価格が5倍にも6倍にもなってしまう訳ではないでしょう。 価格の差は材質だけでなく、その後の加工にも原因があります。

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加工の違いについて

クラリネットは、材木を所定の形に削り、キイポストやキイを取り付けることで完成されます。 言葉で言ってしまえば簡単ですが、実際にそれを実行するのが大変なのは、小学校の 夏休みの工作を思っていただければある程度想像できるのではないでしょうか。
現在クラリネットが比較的安い価格で手にはいるのは、安定した材料供給があることもそうですが、 なによりも加工の機械化が大幅に進んで、確実な工作が可能となったことが大きいのです。 これは、工作の機械化があまり行われていない弦楽器と比較すれば明らかです。

さて、機械化がされているといっても、材料の微妙な違いにあわせた細かな調整を 自動でやるわけではありません。そういう細やかなことをすればするほど、楽器の性能は 確実なものになりますが、当然制作に必要な経費はたくさんかかってしまいます。 こういうことを積み重ねていくと、楽器の価格は大きく変わってしまいます。
もちろん「安価な楽器の作りがいい加減」といっているのではありません。 たとえカレッジモデルといわれる、安価で提供される楽器であっても、その中には 最新の技術や研究の成果がぎっしり詰まっているのです。そのことは、現行のカレッジモデルと 10年前に出たそれを吹き比べればすぐわかります。
そのほかに、キイやキイポストの材質も、音に微妙に影響を与えます。さらに、メッキの材質によっても 微妙な変化があります。でも、その違いにはっきりした相関性があるわけでもなく、 様々な要因が複雑に絡み合っているので、その対応を簡潔に表すことは不可能でしょう。 もちろん、ニッケルよりも銀、銀よりも金の方が高いのはいうまでもありません。

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価格と性能は比例しない?

さて、ここまで価格の相違の原因を探ってきたのですが、どれもこれも、劇的な違いを生む 要因ではないことがわかります。ですから、価格が倍になったからといって音量が 倍になる事はありません。これは、別にクラリネットに限ったことではなくて、 たとえば車でも、価格が倍でも最高速度は100数十キロです。
さらに、必ずしも最高価格の楽器が最高の性能を持っているわけではありません。 というのは、同じような楽器であっても、その使用目的や、求める理想像によって 楽器に求められる性能が異なってくるからです。たとえば、先に挙げた YAMAHA の楽器のうち、 YCL-951/952/953 は、その特徴を「様式を超克し、本質へと迫る普遍の力(951)」 「とらえがたい美の精妙さ(952)」「揺るぎない美の調和(953)」と表していますが、 それを実現するための性能はそれぞれ異なるはずです。価格の違いは、求める性能の 実現に必要な手間や技術の違いを反映しているともいえます。
ですから、もし楽器を購入するのであれば、ただ単に価格を比較するだけではなく、 価格の裏にある楽器の特徴も知らなければならないでしょう。

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