このページの最終更新:17th Nov 2002

よく響く音を出そう

大きな音が出ない

よく「大きな音が出せない」という悩みを聞きます。クラリネットは、構造的には 比較的大きな音が出しやすい楽器なのですが(詳細は別の記事を 参照してください)、実際にはその性能を一杯まで生かすことができていないようです。

大きな音が出せない場合、ダイナミクスの幅がかなり限られたものになってしまいます。すると 当然ながら、ダイナミクスの幅を生かす表現が難しくなります。つまり、音楽のメリハリをつけるのが 非常に難しくなってしまうのです。これは、自分の表現したい事を音楽にのせるためには、とても 不利な要因になってしまいます。
では、なぜ大きな音が出ないのか、そしてどうすれば改善できるのかを考えてみましょう。

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大きな音と感じる要因

まず、音が大きくならない原因を考えてみましょう。もちろん原因は様々な条件によって いくらでもあるのですが、大雑把にあげると、次のようなものが考えられるでしょう。

このようにいくつか考えられる例をあげてみましたが、多くの場合、物理的な音量そのものに 原因があるのではなく、せっかく出ている音をうまく響かせることができていないことが 原因となっているのです。これは裏を返せば、響かせるコツさえ身につければ、大きな音が 出ないという悩みは、比較的容易に解決に向かう可能性が高い、という事でもあるのです。

では、広がりのある音、よく響く音とは一体なんでしょうか。
ここでひとつ思い浮かべてください。オペラ歌手は、マイクなどの器具を使わないでも 大きなホールの一番後ろまで充分届くような、豊かな声でフレーズを歌いあげます。 そのときの様子は、よく「体全体で声を発するよう」だと表現されます。私たちは、 普段の会話やカラオケなどでは喉とその回りの部分を使って声を出しているといいます。 ホール全体に広がる声を出そうとすると、発音する部分として喉だけでは不足で、 体全体を発音源とすることで初めて後ろまで通る声になるのです。
もうひとつ思い浮かべてみてください。皆さんは、すぐ隣に座っている人に話し掛ける ときと、大きなテーブルをはさんだ向かい側にいる人に声をかけるときで、声の大きさに どのくらい差があると思いますか。遠くにいる人に声をかけるときのほうが、声が大きくなるのは 確かにそのとおりなのですが、たとえば10倍遠くにいるからといって、声の大きさが10倍に なることはありえません。それにも関わらず、近くにいる人に向けてしゃべっている声は 遠い場所にいる人には聞こえにくいのに、遠くの人に向かってしゃべるとちゃんと聞こえます。 このとき何が違うのか考えてみると、声の出す人の意識がどこへ向かっているか、の違いで あることに気づきます。

次に、大きな音を出していない、というのはどういうことなのでしょうか。
ほとんどの場合、自分が今までの練習や演奏でやっってきた範囲で「自分はここまで大きな音が 出せる」という限界点のようなものが何となく分かると思います。しかし、実際には ほとんどの場合それより大きな音を出すことができるものです。なぜ実際に出るところまで 使わない、あるいは使えないのでしょうか。その原因の一つは、ただ大きいだけの音は 実際の演奏ではまったく使い物にならない、ということがあると思います。むやみに 大きな音にすると、音色が汚く、ピッチもずれた音になってしまいます。そのままでは 音楽の中では使えませんから、自然と「使える範囲で最大の音」が「最大の音」として 認識されてしまうのではないでしょうか。

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よく響く音を出すためには

これらのことから、大きな音、あるいはよく響く音を出すためにはどういうことを意識すれば よいか、ポイントをまとめてみましょう。

ひとつめは、音の広がり、厚みをもたせて、より大きな音として聴かせる方法です。 先の例のように、発音源をできるだけ大きくすること、音の目的地を遠くに置くことが ポイントとなってきます。
発音源の方ですが、どんな高さの音でも楽器全体を振動させて 音を出すように意識することが基本となります。たとえば、中低音域(レジスタキイを 使わない音域)で mf のロングトーンをしたときに、ベルの部分が振動しているか、実際に ベルに軽く触れて確認してみてください。吹き込む息が、開いたトーンホールを無視して ベルの先から全部出るように意識して吹くと、良くなることが多いです。また、よく言われる ように喉を開けること、息をたっぷり吸って、適度なテンションを保ちながら息を出して いるかも確認してみてください。
次に、音の届ける目標です。楽譜が目の前になってそれに意識が集中したり、指揮者にばかり 気を取られると、いつのまにか音がそこまでしか届かなくなってしまいます。合奏中はしんどいかも しれませんが、基礎練習のときなどに、自分の音を聴かせる点を遠くに持っていく癖をつけるように するといいようです。ロングトーンのときに、メトロノームを普段より1mうしろに置くだけでも ずいぶん感じが変わることがあります。

最後に、より大きな音でも、演奏に使えるような音にできれば文句ありません。 いちど、音色やピッチは完全に無視して、どこまで大きな音が出るか試してみてください。 きっと予想外に大きな音が出ることにびっくりすると思います。ただ、そのままの音では 演奏には使えないのは、先に述べたとおりです。この大きな音量を保ったまま、使える音に 直していかなくてはなりません。ロングトーンなどの基礎練習で、上に書いたことなどを気に しながら練習してみてください。無理矢理大きな音を出そうとするよりも、暖かい息で 部屋全体を包み込むような音を目指した方が、いい結果になることが多いようです。
発想としては、使える音になるまで音量を落とすのではなく、大きな音を使える音に 変えていく、ということが大事です。すぐに完成するような簡単なものではないので、 気長にじっくりと取り組む必要があるでしょう。

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