このページの最終更新:21st Jan 2002

息の要素を考える

息の要素とは?

クラリネットの講習会に行ったり、様々な文献を当たってみると、だいたいの 場合「息の速さ」や「息の太さ」について触れられています。そして大抵は息の スピードは速く、息の太さはかなり太く、というようないい方をされています。
しかし残念ながらそれですべての問題が解決する訳ではないのが困ったところです。 それはなぜなのでしょうか。

一つ考えられるのは、「息の速さ」「息の太さ」以外の要素が存在するということです。 もしそうであれば、たとえ息の速さと太さが同じであっても、解決しない問題が 出てきてしまうのもうなづけます。では、具体的にその要素とはどんなものが あるのでしょうか。それは、暖かさと密度ではないでしょうか。

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息の暖かさ

まず、息の暖かさですが、物理的には人間の体温近くに暖められた空気しか 出すことはできません。しかしここでは、少し違った意味でとらえます。ここで言う 息の暖かさは、楽器を通して表現する(表現したい)感情としての暖かさを持つ 息のことなのです。

イメージとしては、寒い日に冷えた指先を暖めるために吹きかける息に 近いものがあります。もちろんこの場合、息のスピードがやけどを冷やすのと比べれば かなりゆっくりで、そのために単純に比較できないという事実はあります。 しかしここで注目したいのは息のスピードではなく、その息にどんな気持ちが こめられているかということなのです。
技術的に優れた奏者は、自分で意識しなくても自然と息に暖かさを付け加えることが できているのではないかと思うのですが、どうでしょう。

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息の密度

次に息の密度ですが、実際の物理現象としては空気の密度が倍になるためには 体積の倍の空気と、それを押し込む仕事が必要になります。でもここでいう密度は そういう本当の物理的な意味ではありません。息を吐きだす事によって生じる隙間にいかに 確実に次の空気を送り込むか、と集約できる、もっと感覚的な密度なのです。
これがしっかりできていないと、楽器が要求する息の量(速さ・強さ・密度 すべてひっくるめて)を満足できなくなってしまって、音が揺れたり、ピッチが 下がってしまう大きな原因のひとつになっているのではないかと思います。

息の密度が足らなかったら、どうように影響が現れるのでしょうか。 上でも少し述べましたが、まずすぐに分かるのが音の揺れ・ピッチのぶら下がりです。
もともとリードの振動は、息の流れ(定常流)によって引き起こされる自励振動です。 詳しくは工学研のレポートを見て欲しいのですが、 この振動の条件はかなりシビアで、息の流れが十分でないと予定の振動数が得られません。 振動数が足らないと、その分だけ音の高さが下がってしまいますから、それでピッチが ぶら下がって聞こえるのです。

また、吹きはじめの瞬間だけ密度が足らないと、吹きはじめに「ぴきゃっ」と いったり、もやもやしてアタックがはっきりしなくなります。この場合、ロング トーンを全音符二つに分けて、途中でタンギングすると二回目はちゃんと音が 頭から出るのです。ですから、はじめの瞬間も他と同じ様にあらかじめ準備できた 状態から吹けばいい訳で、つまり,吹きはじめから息の密度が十分になるまでの 時間をできるかぎり短くする事が必要なのです。

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息の速度と太さ

最後に、一般的にいわれる「速度」と「太さ」について考えてみましょう。
まず速度ですが、あまり速度が遅いと音が充分に鳴り響かず、音がぶら下がったように なってしまいます。しかし一方で、あまりに速すぎると今後は音が全体にとげとげしく、 鋭く聞き苦しい音になってしまいます。したがって、それぞれの音に求められる、適切な 息の速度があるようです。だいたい、低音では遅い目、高音になるにしたがって 速度が要求されると考えてよいでしょう。

息の太さは、喉の開き具合や時間単位に使う息の量などによって決まるようですが、 密度と同じで、どちらかというと概念的な要素が強いようです。したがって、太さと 密度は関連する部分が多いと思われます。場合によっては同一視することも あるかもしれません。しかしやはり、別に考えて使い分ける方がいいと思います。
さて、その息の太さですが、基本的には太い方がいいようです。ごくまれに、息をわざと 細くして弱々しい音にすることもありますが、非常に特殊な例と考えてよいでしょう。 音の大小と息の太さの間には、あまり相関性がないと考えるべきです。むしろ、 小さい音のときこそ、太い息でしっかり支えてやる気持ちが必要なのではないでしょうか。

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