このページの最終更新:17th Dec 1998

タンギングを極める

タンギングの役割

クラリネットを吹く人にとって、タンギングは重要です。特にシングル リードの楽器であるクラリネットは、タンギングなしでは美しいメロディを 吹くことができません。その理由を、楽器の構造面から考えます。

シングルシードの楽器の原点は、リードが揺れる事にあります。そこで、 リードの動きだけに集中して検討してみます。
リードは、息が当たると自励振動をおこします。その詳しい解説は工学研の研究に 譲りますが、簡単にいうと、息がリードを曲げようとする力と、曲がった リードが戻ろうとする力が微妙に釣り合わないので、曲がったり戻ったりを繰り 返すのです。
ところで、息はいったん出てしまえばほぼ一定に流れるようにできますが(もちろん そうしない事もできるけど)、その出るはじめの瞬間はそうはいきません。 人間にとっては短い時間かもしれないけれど、リードが一定に振動できるように なるためにはその短い息の乱れはかなり問題です。

息が乱れる原因は、口・のど・肺の中にある空気が、充分な圧力に達していない からで、圧力が足らないためにちょっとした外乱で息が大きく変化してしまう のです。ですから、体の中の空気がある程度の圧力になってからはじめて息を 出すようにすれば、息の乱れは最小限に押さえられます。その、圧力になるまで 息を止めておくのが、タンギングの一番大事な役割です。

よく、タンギングはリードを舌で突く事と思っている人がいます。あるいは舌で さわるようにすればいいといったりします。でも、これらの見解には重要な点が 抜け落ちています。タンギングはあくまでも次の音の発音のためのもので、 前の音を切る事にはたいして関与しないという点です。
この点を考えれば、タンギングで一番重要なのは舌を離す瞬間だという事に なります。実際そのとおりで、せっかく息をためて圧力が充分な状態になって いても、舌の離し方ひとつで台なしになってしまいます。

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タンギングの練習(1)

タンギングの練習は大変です。ひとつは上に書いた「舌を離す瞬間の動き」 を意識しないで練習するからで、もうひとつは「速いタンギングが大事」と 思い込んでいるからです。

楽譜1 まず、このようなフレーズを考えます。音は同じなので、全音符の音を切る感じ になります。このとき、二つ目の付点2分音符の音の出だしに注目して下さい。 舌の離し方がいいかげんだと、音の出だしがはっきりしなかったり、余計な音や 雑音が入ったりします。舌を離す時はダイナミックに、かつ繊細にという事に なります。
舌の動きが遅いと、せっかくためた圧力が徐々に解放されるので意味がありません。 一気に解放して、素早く安定させるように心がけます。とはいっても、一瞬の 出来ごとなので深く考えすぎないで色々試してこつをつかむようにしましょう。
それができれば、今度は頭の4分音符を落とします。それで全く同じように 付点2分音符が発音できれば目的は達成できます。

タンギングが一回だけならこれで完璧なのですが、実際に様々な音楽をやっていると、 それでは済まない事が分かります。すなわち、タンギングが一回きりではなく 何回も続いて出てくるのです。そして、作曲家の傾向として、音楽のテンポが 速い時ほどそういう楽譜を書く傾向にあります。
そうすると、速い連続タンギングができなくては、という事になって苦しい 練習をするようになっていきます。でも、それはそんなに重要な事ではないのです。 だいたいそういう速いタンギングが求められるフレーズは本当の意味でのメロディ ではない事が多いし、極端な話そのフレーズを簡単なものに書き換えてしまっても たいして変化がない事も多いのです。つまり速いタンギングは絶対必要なものでは ないという事なのです。
もちろん、できればそれに越した事はありません。次の項目では、 その方法を考えてみることにしましょう。

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タンギングの練習(2)

速いタンギングを要求される場面には、いくつものパターンがあります。 場合によっては「それっぽくなっていればよい」ということもありますが、 目立つ場面で使われていることもあります。そういう場面に遭遇してしまったら どんな練習をすればいいでしょうか。

楽譜2 一つの方法として、左の楽譜のようにまずは短い音を一つだけ発音します。 このとき、音がつぶれてしまわないように、つまり、鳴っている時間は短くても 確実に音がなるように注意します。次に、その短い音を二つ続けて吹いてみます。 一つ目と二つ目で音の感じが変わらないように気をつけましょう。
これを、要求される音数まで順に増やしていくのです。テンポは、 本番で実際に吹くテンポだけでなく、それより速いものや遅いものも取り混ぜて、 柔軟に対応できるようにしましょう。
実際問題として、16分音符が20個も30個も続いている楽譜が(もし)あったら、 それを楽譜どうり完璧に吹くのはテンポにもよりますが、かなり困難です。 その原因は、人間の舌が、タンギングのような素早い反復動作に慣れていない からでしょう。突然できるようになるというたぐいのものではありませんが、 こういう方法も一度試してみてください。

なお、この項目は、GAQUE さんの情報を元に作成しました。

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ダブルタンギング

世の中には、ダブルタンギングというものがあります。おもに金管楽器の 奏者が必要に応じて使っているのですが、普通のタンギングを TuTuTu と表現 して、ダブルタンギングをTukTukTuk と表現する事が多いようです。
これでは少し分かりにくいかもしれませんが、要するに、普通のタンギングの 間で喉で息の流れを切ることによって、速いタンギングを実現しよう、という 事なのです。

さて、このダブルタンギングをクラリネットでできるか、という事はあちこちで いろんな議論があります世の中の傾向としては「ダブルタンギングはしない」 というのが多いようですが、その中身は「ダブルタンギングはクラリネットに とって不可能かつ無意味」ということなのです。

上にも書いた通り、シングルリード楽器の根源はリードと息の微妙な不釣り合い にあります。そして息の圧力が中途半端になってしまうことによって、 音の出だしなどに弊害が現れます。
その点を踏まえてダブルタンギングを見てみると、Tuk の Tu の部分はいいと して、その後の k の部分が問題になります。
金管楽器の場合、楽器の発音体は唇で、弾力と柔軟性に優れていますから、 息の流れに敏感に反応します。一方のリードは弾性が強いので、息を止めても しばらく振動が続きます。そうでなくても、中途半端な息の状態におかれるの ですから、この状態はクラリネットとしてはあまり望ましくありません。 せっかくタンギングで中途半端な状態をなくそうとしてるのに、わざわざ つくりだす必要もない、すなわちクラリネットにダブルタンギングは必要ない、 という事になります。

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