このページの最終更新:11th Nov 2002

指だけ練の効用と限界

指だけさらうという練習 / 注意すべき問題

注意すべき問題

音を出さないことによる問題

では、指だけ練に頼るとどんな点が問題となるでしょうか。まずはじめにいえるのは、 音を出さないせいで、不完全な部分が見えなくなってしまうということです。
たとえば、早いパッセージがうまく吹けないのは、もちろん指が音楽に ついていっていないというのもあります。しかしそれと同時に、指と息の使い方が うまくリンクしていない、という場合も多いのです。いくらすべての音がスラーで つながっていたとしても、音の移行に従って息の速さや密度は微妙に変化するはずです。 もし息の使い方に変化がなければ、音によって大きさが変わったり、移行の途中に 余計な音が入ってしまったりするでしょう。ひとつひとつの音をタンギングできる場合は もっと顕著で、指と息や舌の動きがずれれば、まともな音を出すことすら怪しくなってきます。 これらの連携を練習するには、音を出すしか方法がありません。

また、管楽器はひとつの運指が特定の音と1対1に対応しているわけではない、ということにも 注意が必要です。金管楽器はもちろんですが、クラリネットであっても、同じ運指で 複数の音を出すことが可能です。幸いにもクラリーノ以下の音域では、運指による支配力の方が 強いので、息の使い方が見当外れでも運指どおりの音がなりますが、音が不安定になりやすく 音色も不自然なことが多いようです。また、クラリーノ音域より上では運指の支配力が 相対的に下がるので、指づかいが運指表どおりでも、全く違った音が出てしまう可能性が 高くなります。これも、実際に何度も音を出して感覚を身につける必要があります。
この他にも、音量の変化は運指では実現できませんから、実際に吹かなければ練習になりません。 このように、楽器の演奏に必要な要素のうちから運指だけを切り離してしまうので、複数の 要素が絡む問題を解決するには「指だけ練」や「音なし練」は役に立ちません。

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楽器がないことによる問題

この他にも、特に「指だけ練」の場合、楽器がないということによる問題もあります。 実際の指の動きをイメージしてみればすぐに分かりますが、クラリネットの場合 多くの指が2つ以上のキイを担当することになります。特に動きが鈍くなりやすい 両手の小指は、4つずつのキイを担当していて、そのキイは非常に近くに配置されています。 これは、小指の動きを少なくするための工夫なのですが、このキイの違いによる微妙な 位置の違いを、楽器のない状態で再現するのは案外大変です。意識はキイを使い分けている つもりでも、実際の指の動きはみんな一緒、という可能性もあります。これでは、何の 練習をしているのか分からなくなってしまいます。

指の動きをトレースしているだけですから、実際にキイをしっかり押したり、トーンホールを 確実にふさぐ、ということが本当にできているか確認する術はありません。楽器を持っていても、 見た目はOKでも実はわずかにトーンホールを塞ぎきれていなくて、実際に吹いてみると音が おかしくなる、ということもあります。これは楽器がなければもちろんですが、楽器を持っている 「音なし練」でも若干怪しい部分が残ってしまいます。
そして、楽器を持っていないことで、右手親指の負担が実際の演奏時と異なる、という点も 見逃せません。親指に重さがかかっていない分指や腕に余計な力がかかりませんから、実際に 楽器を持った時にコンディションが変わってしまってうまく指が動かない、ということも 起こりえます。

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利点と欠点を知って上手に使おう

このように、「指だけ練」「音なし練」には、楽器演奏に必要な要素の一部を切り出したがために おのずと限界があります。逆のその部分をとりあえずフォローすることに限定すれば、 楽器がなくても、また音を出せない状況でも、練習としてある程度の効果が期待できる 可能性があります。いまからやろうとしていることが、本当に「指だけ練」「音なし練」で 練習として意味があるのか、常に考える必要があるでしょう。
いくら指をさらっても、一度も音を出したことがなければ、本番でうまく演奏できないのは 誰でも想像がつくと思います。やはり基本は、実際に吹いて練習することです。間違っても、 「楽器を準備するのが面倒だから指だけ練をしておく」といったことが無いようにしたいものです。

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指だけさらうという練習 / 注意すべき問題